2019年9月
遠山記念館で特別展「古筆招来 高野切・寸松庵色紙・石山切」
「公益財団法人 遠山記念館」(埼玉県比企郡川島町)で、平安~鎌倉の古筆を中心とする特別展「古筆招来 高野切・寸松庵色紙・石山切」が10月20日まで開かれています。30年ぶりに展覧会での公開となる個人蔵の2点、「寸松庵色紙」(「山さとは」)と「石山切 伊勢集」(「しるらめや」)を含む書跡24点と、蒔絵調度や小袖など総計30点で構成しています。
美術館に入って左手の展示室には、まず古今和歌集「高野切」(第一種)巻一の3点を並べて展示。①五島美術館蔵の巻頭(重要文化財、歌番号1~3) ②遠山記念館蔵の2首(歌番号9~10) ③出光美術館蔵の4首(重要文化財、歌番号46~49 ※展示は9月29日まで)──の3点を順番に追うことで、筆運びの変化が見て取れます。 9月13日に行われた報道内覧会で、久保木彰一学芸員は「巻物20巻の高野切は3人の能書家が書き分けているが、スタート部分は一番の書き手が担当した。①は最適な緊張感をもってゆっくりスタートし、②は少し緊張がほぐれたなという辺りで、③では肩の力も抜け、どんどんスムーズに、リズムカルに書き進んでいる。見比べると、書き手の心の中まで覗くように鑑賞していただける」と解説しました。
同じく古今和歌集を書いた「寸松庵色紙」も、「高野切」と同じく3点並べて展示。①遠山記念館蔵の「むめのかを」(歌番号46) ②五島美術館蔵の「あきはきの」(歌番号218) ③個人蔵「山さとは」(歌番号214)──のうち、30年ぶりに展覧会への出品が実現したという③は唐紙の保存状態が良く、墨色がくっきりと鮮やかです。 また、①遠山記念館蔵「寸松庵色紙」に書かれた「むめのかを」の歌は、その右手に展示した出光美術館蔵の「高野切」にも書かれており、異なる能書家が書いた文字を比較することができます。「高野切」は巻子本に行書き、「寸松庵色紙」は粘葉装の冊子本に1ページずつ散らし書きと、それぞれの形式は異なるものの、久保木学芸員は使用した変体仮名や文字の大きさに共通性があり、2人の能書家が仮名に対して近い美意識を有していたことがうかがえると指摘しました。
続いて展示するのは、「本願寺本三十六人家集」の「貫之集下」「伊勢集」の断簡「石山切」4点。藤原定信筆の「貫之集下」2点、伝藤原公任筆の「伊勢集」2点が並び、唐紙などに継紙技法を駆使し、金銀泥による下絵を施した華麗な料紙も見どころとなっています。
ロビーを挟んでもう一つの展示室(70㎡)には、遠山記念館が所蔵する藤原俊成、藤原定家(「明月記」断簡、「後撰集歌切」)など平安~鎌倉の古筆をはじめ、一休宗純の仮名消息(室町時代)などの書跡、重要文化財「秋野蒔絵手箱」(鎌倉時代)、江戸時代の蒔絵硯箱、文字入模様単衣・小袖などを展示しています。
なお、展覧会図録には今回出品された「高野切」「寸松庵色紙」「石山切」の10点を原寸で掲載。それに遠山記念館の所蔵品から出品した古筆のうち6点を収録しています。
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2019年9月14日(土)〜10月20日(日) 特別展「古筆招来 高野切・寸松庵色紙・石山切」 公益財団法人 遠山記念館(埼玉県比企郡川島町)
2019年9月24日(火)14:00
第104回 書教展
第104回 書教展
2019年9月19日(木)~9月26日(木) 東京都美術館
※最終日は午後1時閉会(入場は正午まで)
主催・公益社団法人 全日本書道教育協会
2019年9月24日(火)11:00