「土橋靖子書展-回帰・感謝・誠の花へ-」開かれる

日本藝術院賞受賞記念・第20回市川の文化人展「土橋靖子書展-回帰・感謝・誠の花へ-」が3月24日まで、千葉県の市川市芳澤ガーデンギャラリーで開かれています。

 

土橋先生が市川市生まれである縁から、同市が記念展を企画。地元の「手古(児)奈」(てこな)伝説を詠んだ万葉集や伊藤左千夫の歌をはじめ、良寛や山頭火など近現代に至る詩歌、古語を題材に、屏風や大字作品も含めた28点(うち新作8点)が並んでいます。

 

土橋先生と中山忠彦先生(右)

2017年度の日本藝術院賞に選ばれた「かつしかの里」(日本藝術院所蔵)も出品。作家・歌人の伊藤左千夫が市川を詠んだ《かつしかや 市川あたり 松をおほみ まつのはやしの なかに寺あり》《桃梨や しみさくはたに 葛飾の をとめら見れば 手古奈し思ほゆ》の二首が書かれています。

 

日本藝術院賞受賞作「かつしかの里」

また、土橋先生の母で歌人の土橋いそ子さんの短歌を題材にした作品も7点。幼いわが子(土橋先生)を詠んだほほえましい一首《赤き紐 ひきずりながら 厨辺(くりやべ)に 入り来る吾子(あこ)が 「ママ人形おんぶさせて」》もあります。

 

3月2日の開会式には、日本藝術院会員の洋画家・中山忠彦先生(市川市文化振興財団理事長)、同じく日本藝術院会員の日本画家・福田千惠(せんけい)先生、篆刻の和中簡堂先生(市川美術会理事長)などが出席。土橋先生は挨拶の中で、副題の「回帰」について「私が生まれ育ったこの市川に回帰するとともに、最初に手習いを受けた母、そして(師の日比野)五鳳先生に回帰するという意味も含まれております」と述べました。

 

芳澤ガーデンギャラリーがある市川・真間地区は、美しい娘の手児奈が多くの男たちに求婚され、彼らが争うのを憂えて真間の入り江に入水したという「真間の手児奈」の伝説地。彼女を祀る手児奈霊神堂や、水を汲んだという「真間の井」、入り江の中州に架けられた「真間の継ぎ橋」など、万葉集に詠まれた旧跡が点在し、書展と併せて散策する楽しみもあります。

 

 

※『左千夫全集』第一巻(岩波書店)所収

 

かつしかや市川あたり松を多み松の林の中に寺あり

明治33年2月12日『日本附録週報』募集短歌(課題「森」)

 

「桃梨やしみ咲く畑に葛飾の少女ら見れは手古奈し思ほゆ」

明治36年4月27日『日本附録週報』募集短歌(課題「雲雀」)「市川の桃林を見る」反歌

 

 

2019年3月5日(火)17:21