お知らせ
東京展ギャラリートーク 市澤静山先生
市澤静山先生 8月28日、東京都美術館
市澤静山先生(漢字)は「文字には長い歴史がありますが、『美しく、形よくまとめたい』という気持ちと、『簡単に早く書きたい』という気持ちと、二つの流れが最初から今に至るまで続いています」と、文字の形が多様な展開をしてきた理由を語られました。
さらに「日本では漢字、ひらがな、カタカナの三つを使いこなしている。これは世界の言語でもめずらしい」と、中国から来た漢字が簡略化され、日本特有の文字と書作品が生み出されてきたことを説明。読売大賞・準大賞、読売新聞社賞の作品を回り、篆書・隷書を中心に見どころを詳しく述べられました。
また、読売書法展が掲げる「本格の書」について、「絵を描く方はデッサンをやったり風景を描いたりして練習します。書の場合も、まったく手本なしに形を作ることは出来ません。私たちが古典と呼んでいるものは、いつの時代も評価され、今日に至っているものです。その古典を学び、美を吸収し、自分の書を作り上げていくことです」と説明されました。
そして、「われわれがやっていることは大昔の人と同じ。古典を勉強して、そこに自分を盛り込んで書くということは何ら変わることがない。しかし、じゃあ30年、40年経ってもまったく同じような表現をしているかというと、やはり流れがあって、書も次第に変わってきています」と述べられました。
2018年8月29日(水)17:30
訃報
日本芸術院会員で、文化功労者の読売書法会最高顧問・古谷蒼韻先生が8月25日、肺炎のため亡くなられました。94歳でした。葬儀は近親者で執り行われました。喪主は妻のフデ子さまです。
お花、弔電はご遠慮したいというご意向です。
謹んでご冥福をお祈りします。
なお、後日、お別れの会が行われる予定となっています。
2018年8月28日(火)21:36
東京展ギャラリートーク 高木厚人先生
高木厚人先生 8月27日、国立新美術館
高木厚人先生(かな)が、第35回を記念する特別展示「読める書への挑戦」の出品作品を解説された内容をリポートします。
高木先生は冒頭、「今日の社会の中で、われわれ書家は友達からも『何で読める字を書かないの?』と日常的に言われています」と述べられました。そして、調和体に取り組むべき理由として、読売書法展が第12回展(1995年)で漢字かな交じりの調和体部門を新設した当時、その推進役だった村上三島先生が雑誌「墨」のインタビューに答えられた言葉を紹介されました。
村上先生は「漢字作品もかな作品も現代日本語の書ではない。現代日本語を書いていないということは、見る人にとって、まず読めないということにつながる。読めなければ書かれている内容が分からない。それがひいては、書が多くの社会人に受け入れられないということにつながる」と憂え、「この危機的状況から脱するためにも、書家がもっと、現代日本語で書いた作品に積極的に取り組まなければならない」と語られています。
一方で高木先生は、村上先生が調和体を「古典と呼べるものが何もなく、生まれたての赤ん坊です。漢字、かな作品のレベルに達するような作品ができるのは、三十年、五十年、あるいは百年かかるかも知れない」と述べられた言葉も引用し、調和体を書く難しさを述べられました。
その上で特別展示に並んだ作品を回り、調和体部門が導入される以前の先達たちを含め、書家の方々が自分の学んだ古典をベースに、漢字とかなの組み合わせ方などそれぞれに「読める書」を工夫していたことを解説されました。
たとえば、桑田笹舟先生の「いろは歌」は奔放に字を散らし、いかにも即興的に書いているように見えますが、「やはり一つ一つ鍛錬されている線で書かれているから、われわれが見ても納得できる景色が出来上がっている」。今関脩竹先生の「あしもとに」も、「変体がなを使っていても、ほかの部分が読みやすければ字を当てはめて読むことができます」と指摘されました。
また、日比野五鳳先生の代表作「のどかさ」に複数の揮毫が残されていることを挙げ、2点の図版を示して「どちらが先に書かれたか分かりますか?」と問いかけられました。書家は先に書いた作品を見て反省し、次はもっと良く書こうとするもの。しかし後で書いた作品の方が良いとは限らず、むしろ先に書いたものの方が、作り過ぎず、素直で良い場合もあると述べられました。
高木先生は書展の鑑賞方法について、「そう難しく考えないで、『面白いな』とか、『もらえるとするならこの書かな』と想像しながら見ると楽しい。書く立場の方なら、見て心地よい、自分も真似をしてみたい、と思える書を探すのが自然だと思います。ご自分の先生の書の流れできちっと作品を作りながら、こういう書展でそれ以外のものを見つけるのも大事です」と助言されていました。
2018年8月28日(火)17:00
東京展「席上揮毫・篆刻会」整理券について
8月29日(水)に六本木の国立新美術館で行われる東京展関連イベント「席上揮毫・篆刻会」は、混雑が予想されるため、当日の午前11時から国立新美術館1階展示室1Bで、優先入場整理券(おひとり1枚限り)を先着で配布いたします。
※席数に限りがあるため、満員の際は入場をお断りする場合もございます。
【席上揮毫・篆刻会】 8月29日(水)午後2時~4時
国立新美術館 3階講堂(東京都港区六本木7-22-2)
※ 読売書法会の現役幹部書家が、調和体を含む最新作を「公開制作」します。
篆刻:和中簡堂(常任理事)
かな:黒田賢一(常任総務)
漢字:星 弘道 (常任総務)
2018年8月28日(火)08:49
東京展ギャラリートーク 有岡先生
有岡ᤸ崖先生 8月24日、国立新美術館 ※ᤸは「夋」に「阝」
有岡ᤸ崖先生(漢字)が、第35回を記念する特別展示「読める書への挑戦」の出品作品を解説されました。
読売書法展では一般の方にも書を楽しんでもらえるようにと、第12回展から「調和体」部門を新設し、漢字かな交じり書に取り組んでいます。
有岡先生は「その機運はずいぶん前からありました。漢字かな交じり文、調和体、近代詩文書など、呼び名はいろいろありますが、漢字とかなを合わせて書き、皆さま方に読んでいただこうという点については共通している」として、理由を次のように説明されました。
「現代は日常でもほとんど活字、または楷書体を目にしていますが、江戸時代は草書とかな、それも変体がなでした。変体がなを連綿を使って書くと非常に早く書けるため、日常生活に非常にマッチしていた。しかし、学校教育の場で漢詩・漢文の素養を身につけたり、和歌を詠んだりする授業が徐々に減り、書を見に来られた方から『何と書いてあるのか分からない』という言葉を多く聞くようになりました」
それでは、具体的にどう書けば「読める書」になるのでしょう。
有岡先生は「行書・草書・変体がな」という、現代人にはなかなか読めなくなった書体とともに、内容を理解してもらう難しさを課題に挙げられました。「ある程度は読めても、江戸時代の言葉遣い、明治時代の言い回しで書かれていたら、内容の理解まで行くかどうか」という懸念です。
さらに、「読めるだけなら活字で十分ということになる。美的に表現し、鑑賞に堪え得る作品にしなければいけない」と作家としての姿勢を語り、調和体部門の新設から四半世紀近く経た現在でも「調和体とはこういうものですよと、どのあたりで折り合いを付けて定義づけするか、いまだに出来ておりません。作家の中にも戸惑いがある」と率直に述べられました。
その上で、特別展示の出品作の見どころを一つ一つ紹介。先達の書家たちが、奇をてらわず自然体で、あるいは大胆に形を崩して書いたと見える作品にも、おのずから長年の鍛錬で磨き上げた感性や線質が表れていることを指摘されました。
また、自作の詩や短歌を書いた作品の味わい深さ、親しみやすさに触れ、「歴代の有名な書家は、王羲之でも王鐸でも自分の言葉を書いていた。日本でもおよそ自分が詠んだ歌を書いている。名文を作る必要はない。旅先の光景で感じたことや、ちょっと気づいたことでも書いてみる、そんなことでいいと思います」と述べられました。
最後に有岡先生は「どうか皆さんも調和体にチャレンジしていただきたい。多くの方がチャレンジすることによって、この分野は開拓され、成熟して参ります。私も皆さんと一緒に勉強したいと思っています」と結ばれました。
2018年8月28日(火)08:36
作品解説会を開催中
第35回読売書法展の東京展では、上野の東京都美術館、六本木の国立新美術館の2会場で、それぞれ作品解説会(ギャラリートーク)が開かれています。
師田久子先生 8月24日、東京都美術館
師田久子先生(かな)が読売準大賞、読売新聞社賞のかな作品について見どころを解説されました。
会場に集まった方は9割が女性。師田先生ご自身の経験も交えた具体的で細やかな説明に、メモを取りながら熱心に聴き入っていました。
師田先生が特に語られたのは、余白や墨量のバランスの取り方、リズムによって「どこに山場(見どころ)を作るか」という点でした。同じ余白でも、作り方は社中によって違いがあり、作者がそれを踏まえつつ工夫を重ねていることを指摘されました。
また、墨の濃淡、渇筆によって作品に立体感が出ることも、受賞作品に即して示されました。墨量については、「大きい字の場合は墨量がないとさびしく見えてしまいます。自宅で書いた時は墨をいっぱい使ったと思っても、会場で見ると少なく感じることがあります。狭い場所で見ていると、会場に展示した時の効果がよく分からず、墨量を少なくしてしまう」とアドバイスをされていました。
同じ系統の古筆に学んだ作品でも、料紙や墨、筆の違いによって雰囲気がずいぶん変わることも紹介。料紙の種類に応じた筆遣いや、表具による展示効果にも話題が及びました。師田先生は「私がかなを始めた頃と違い、今はいろいろな紙があります。紙屋さんに行って自分の好きな料紙を探してくるのも、かなを書く楽しみの一つ」と語られました。
最後は「まず古筆を学び、真似から始めて自分らしい字が書けるようにめざしてください。そして習うだけでなく、ぜひ自分でも人に教えてください。人に教えると、自分にも勉強になるから上手になりますよ。そしてお弟子さんの1人でも2人でも読売書法展に出しましょうよ」と呼びかけ、トークを締めくくられました。
作品解説会(ギャラリートーク)
◆国立新美術館(1A展示室)
※特別展示「読める書への挑戦」出品作品の解説
8月24日(金)漢字:有岡ᤸ崖(常任理事) ※ᤸ=「夋」に「阝」
8月26日(日)漢字:牛窪梧十(常任理事)
8月27日(月)かな:高木厚人(常任理事)
8月30日(木)漢字:大澤城山(常任理事)
8月31日(金)かな:岩井秀樹(常任理事)
9月1日(土) 漢字:吉澤鐵之(常任理事)
9月2日(日) 漢字:角元正燦(常任理事)
各日午後2時~3時
◆東京都美術館(ロビー階第1公募展示室)
※35回展特別賞受賞作品の解説
(今回に限り、読売大賞・準大賞・新聞社賞・俊英賞・奨励賞が第2会場に陳列されます)
8月24日(金)かな:師田久子(常任理事)
8月26日(日)篆刻:和中簡堂(常任理事)
8月27日(月)漢字:吉澤大淳(常任理事)
8月28日(火)漢字:市澤静山(常任理事)
8月29日(水)漢字:日賀野琢(常任理事)
各日午前11時~12時
2018年8月28日(火)08:36
中央表彰式開かれる
第35回読売書法展の中央表彰式が25日、東京・芝公園のホテル「ザ・プリンス パークタワー東京」で約2000人が出席して開かれました。
最高賞の読売大賞を受賞した森上洋光さん(51)(漢字部門)には、読売書法会の老川祥一会長(読売新聞グループ本社取締役最高顧問)から賞状、副賞と賞金100万円が贈られました=写真上=。続いて準大賞の8人にも賞状、副賞と賞金30万円が贈られ=写真下=、読売新聞社賞、読売俊英賞、読売奨励賞などの各受賞者も表彰されました。
引き続き東京展の表彰式が行われ、特選、秀逸、入選の方々が表彰されました。
最後に、読売大賞の森上さんが受賞者を代表して挨拶しました。
森上さんは、時代を経て伝承された文字資料や名筆の「静かに放たれる清新な格調、崇高な存在感、優美な伝統の世界」の魅力を改めて述べ、「『本格の輝き』を標榜する読売書法会で、この古典に寄り添っていけることは、高い境地へいざなってもらえるような喜びを見出すことができます。この恩恵を胸に、作品制作や様々な活動を通して文字文化伝承の一助となるよう尽力することを誓い申し上げまして、受賞の挨拶といたします」と結び、大きな拍手を浴びました。
2018年8月25日(土)22:29
東京展・六本木会場も開幕
第35回読売書法展の東京展は24日、前日に始まった上野の東京都美術館に続き、六本木の国立新美術館でも幕を開けました。
六本木会場では、第35回を記念した特別展示「読める書への挑戦」が開幕前から話題を呼び、開館と同時に多くの人が訪れました。
読売書法会の伝統につながる先達たちの漢字かな交じりによる書と、現在の書法会幹部書家の先生方による調和体作品を一堂に展観。一般の人が親しめる日本語による書への取り組みを紹介しています。
先達の先生方と、現在の書壇を代表する幹部書家の先生方の作品が、長大な展示室にずらりと並ぶ光景は、まさに圧巻です。
なお、29日(水)に国立新美術館で行われる関連イベント「席上揮毫・篆刻会」は、混雑が予想されるため、当日の午前11時から国立新美術館1階展示室1Bで、優先入場整理券(おひとり1枚限り)を先着で配布いたします。
※席数に限りがあるため、満員の際は入場をお断りする場合もございます。
2018年8月24日(金)22:58
東京展・上野会場で開幕
第35回読売書法展の東京展が23日、上野の東京都美術館で開幕しました(29日まで)。
24日には、六本木の国立新美術館でも始まります(9月2日まで。8月28日は休館)。
展示区分が例年と異なります。ご来場の際はくれぐれもご注意ください。
読売大賞・準大賞・読売新聞社賞・俊英賞・奨励賞の各受賞作品は、すべて上野の東京都美術館に展示されます。
また、特選と東京展の秀逸、会友、入選の額装で姓の頭文字「ア、イ、チ~ワ」の作品も上野会場に展示されます。
最高顧問、顧問、常任総務、執行役員の先生方の第1、第2作品は、すべて国立新美術館に展示されます。
くわしくは、下記リンク先
【注意】東京展_展示区分の変更 をご覧ください。
https://yomiuri-shohokai.com/news/date/2018/07/12
2018年8月23日(木)16:56
東京展の陳列始まる
第35回読売書法展の東京展が、上野の東京都美術館(23~29日)と六本木の国立新美術館(24日~9月2日)の2会場で開幕するのを前に、21日、展示室の陳列作業が始まりました。
国立新美術館では、朝から広大な展示室に作品が運び込まれ、あらかじめ作品点数とサイズを基に作られた図面に従い、次々と壁に掛けられていきました。
また、第35回を記念した特別展示「読める書への挑戦」の会場では、西川寧、青山杉雨、杉岡華邨、村上三島の各先生をはじめ先達の大家による作品・書状約50点が梱包を解かれ、読売書法会幹部の先生方による調和体作品と一堂に会しました。
2018年8月21日(火)20:04