台東区立書道博物館で「歴史に名を残した日本人の書」開催中

 

台東区立書道博物館(東京・根岸)が所蔵する洋画家・書家の中村不折(1866~1943年)のコレクションから、奈良時代~昭和時代の皇族、貴族、武士、文人、政治家らの書画、52点を公開しています。「ありったけの優品を集めました」(同博物館学芸員・中村信宏さん)という豪華な顔ぶれです。6月16日まで。

 

 

主な出品作品をご紹介します。

 

「心経(しんぎょう)」 伝空海 平安時代・弘仁12年(821年)

隷書、草書、行書、楷書が混じり、梵字風の文字も見られます。寛永寺に伝わったもので、巻の表紙の裂には葵の紋が入っています。

伝空海「心経」 平安時代・弘仁12年(821年)

 

 

 

「古今和歌集巻第八(翰香館本)」 伝紀貫之 平安時代・11世紀(拓本は江戸時代)

江戸時代の版木による拓本です。浮世絵全盛期の江戸時代、日本の版木制作能力は世界的に見ても最高レベルだったといわれ、この拓本も、黒い紙に白い線で書いたかのような精密な出来ばえです。

伝紀貫之「古今和歌集巻第八」 平安時代・11世紀 (拓本は江戸時代)

 

「大石内蔵助宛書状軸」 片岡源五右衛門 江戸時代・元禄14年(1701年)

赤穂四十七士の一人、片岡源五右衛門が、討ち入り事件の発端となる江戸城松之廊下の刃傷事件を国元の大石内蔵助に知らせた手紙です。中央部分に「松之廊下」という言葉が見えます。

片岡源五右衛門「大石内蔵助宛書状軸」 江戸時代・元禄14年(1701年)

 

 

 

若冲、大雅、良寛、一茶

江戸時代のスターたちも登場します。伊藤若冲は細密で色鮮やかな描写で知られていますが、「芭蕉翁図軸」は松尾芭蕉を描いた落ち着いた雰囲気の水墨画です。書作品ではありませんが、人気が高く展示作品に選ばれました。

池大雅「草書五言二句軸」は、さまざまなかすれの表情が大雅ならではの風格を感じさせます。

良寛の「行草書『仁』軸」は、細く強い線を自在にあやつった、キレのある作品です。

小林一茶「短歌軸」は、温かみの感じられる作品で、円と三角と棒だけで描いた僧の姿が印象的です。

 

左から、 伊藤若冲「芭蕉翁図軸」 江戸時代・18世紀;  池大雅「草書五言二句軸」 江戸時代・18世紀;  良寛「行草書『仁』軸」 江戸時代・18~19世紀;  小林一茶「短歌軸」 江戸時代・18~19世紀 =冒頭のチラシ右下に作品写真=

 

 

 

「中村不折宛書簡」 正岡子規 明治33年(1900年)

俳人・正岡子規と洋画家・中村不折は明治28年(1895年)、新聞「日本」の記者、挿絵画家として日清戦争従軍のために一緒に大陸にわたった間柄でした。この手紙で、子規は、冒頭の硯の絵の趣向を借りて俳句雑誌「ホトトギス」の表紙をデザインして欲しい、と不折に依頼しています。

正岡子規「中村不折宛書簡」明治33年(1900年)

 

この他、光明皇后、源義家、楠木正成、伊達政宗、本阿弥光悦、荻生徂徠、徳川光圀、頼山陽、渡辺崋山、副島種臣、犬養毅ら、日本史の主人公たちの書画が一堂に展示され、それぞれの作品を味わい、書き手の人柄に思いを馳せると共に、史実にそって歴史の旅を楽しむこともできる展覧会です。

 

2019年3月26日(火)13:12