5.書道界情報
「日本の書200人選」展 記者発表会リポート
東京五輪・パラリンピックの開催年に合わせ、「日本の自然と書の心『日本の書200人選~東京2020大会の開催を記念して~』」展(読売新聞社など後援)が2020年4月25日~5月10日(同年6月11日~21日に会期変更)、東京・六本木の国立新美術館で開かれることが決まり、同展を主催する実行委員会、文化庁、日本芸術文化振興会が12月9日、同美術館3階の研修室で記者発表を行いました。その内容をくわしくご紹介します。
出品する書家は202人。読売書法会(111人)、毎日書道会(66人)、産経国際書会(21人)のほか、会派に属さない書家(2人)と、ダウン症の書家として知られる金澤翔子さん、両手を失いながらも両ひじで筆を挟み込んで制作を続ける書家・小畑延子さんの作品を一堂に紹介します。
東京五輪・パラリンピックを契機に政府が進める「日本博」の主催・共催型プロジェクトにも認定。実行委員会(東京2020オリンピック・パラリンピック記念書展実行委員会)の田中壮一郎・全国書美術振興会会長は「世界各国から多くの人々が参加されるスポーツの祭典は、わが国の文化芸術を世界に発信する好機。日本の伝統文化である書が、現代に息づき、継承されている姿を総合的に発信することで、東京2020大会の機運の醸成に役立つことができれば幸い」とあいさつしました。
また、文化庁の坪田知広参事官(芸術文化担当)は「『日本博』で今決まっている中でも目玉の一つがこの書展。日本人と自然という『日本博』の総合テーマにも合い、日本の代表的な書家の作品が一堂に展示されるのはすばらしい」とあいさつ。日本政府観光局(JNTO)を通して対外的に展覧会をPRするとともに、在日大使館などにも直接案内を出し、多くの訪日・在日外国人に「日本の書」を見てもらうよう努めたいと述べました。
実行委員会の副委員長を務める髙木聖雨先生(全国書美術振興会理事長)は「書道界にとって東京オリンピック・パラリンピックで何ができるかは大きな課題だった。幸いにも文化庁のご尽力で国立新美術館の企画展示室を借りることができ、企画が一気に具体化した。昨年10月から実務者会議を20回近く開いて今日に至った」と経過を説明。「日本の書道界が一堂に展覧会を開くのはまれなことで、オリンピック記念としては最高の展示になるのではないかと思う」と述べました。
続いて別室に会場を移し、報道陣を前にデモンストレーションが行われました。星弘道先生は「五輪」と大書した二文字に「地 水 火 風 空」と書き添え、黒田賢一先生は五つの輪の中に「とぶ」「はしる」「およぐ」「なげる」とスポーツにちなむ言葉を、石飛博光先生は応援ソング「パプリカ」の歌詞の一節を揮毫して盛んな拍手を浴びました。
日本の自然と書の心「日本の書200人選~東京2020大会の開催を記念して~」の展示構成は次の通りです。
(1)書家202人の作品展示
文化功労者、日本芸術院会員を含む書家が、漢字、かな、漢字かな交じり、篆刻などさまざまな書体を、軸装、額装、屏風、巻子などの様式で制作した新作を中心に展示。出品書家は会派にとらわれず選出された202人。
(2)児童・青少年の優秀作品
国立青少年教育振興機構が主催する「全国青少年書き初め大会」をはじめ、全国高等学校総合文化祭(総文)、全日本書初め大展覧会、JA共済の全国小・中学生 書道コンクールなどの大臣賞作品を展示。
(3)特別支援学級卒業生の書
青森県八戸市の書家・養護学校教諭の西里俊文さんが1999年にボランティアで始めた書道教室に通ってきた特別支援学級の卒業生3人の作品を展示し、成長記録を映像で紹介。
(西里さんは2008年、「地域社会教育活動」部門で第57回読売教育賞)
(4)出品作品の制作風景を映写
11人の書家の協力を得て、展示作品の制作風景を撮影した動画を紹介(井茂圭洞、新井光風、石飛博光、杭迫柏樹、黒田賢一、齋藤香坡、髙木聖雨、辻元大雲、土橋靖子、仲川恭司、星弘道の各先生)。
(5)文房四宝(筆墨硯紙)など書道用具の展示
東日本大震災で被災した石巻市の雄勝硯(おがつすずり)、2018年の西日本豪雨で被害を受けた広島県熊野町で生産されている熊野筆をはじめ、書道文化を支えてきた日本の伝統工芸技術を紹介。
(6)デモンストレーション、ワークショップ
訪日外国人や一般の人にも書を理解してもらうため、書家が作品を制作するデモンストレーション、書道体験ができるワークショップを会期中に開催。
2019年12月10日(火)18:00