古河市の篆刻美術館で河野隆遺作展

 

2017年11月に69歳で亡くなり、三回忌を迎えた篆刻の河野隆先生の遺作展が、来年12月まで各地で企画されています。そのうち美術館では初の開催となる「河野隆遺作展」が11月18日まで茨城県古河市の篆刻美術館、街角美術館の2会場で開かれ、「現代書道二十人展」に出品した篆刻作品を中心に、書画なども含む84点を紹介しています。

 

河野先生は横浜国立大学4年だった21歳の時、生井子華に師事。21年間にわたり、師が住む古河市に通って指導を受けました。また、全国初の篆刻美術館である「古河市 篆刻美術館」が1991年に開館する際には生井子華の作品収集に協力したのをはじめ、運営や篆刻の普及に尽くしました。

 

ゆかりの深い同館での遺作展には、現代書道二十人展の出品作から選ばれた「還嬰」「古人轍」など26顆や、第23回・第32回読売書法展の出品作などが並んでいます。篆刻作品には弟子による解説文が添えられ、「『縦一行の印は、ただ文字を置くだけでは見応えのある作品にはならない』と指導されていた」(山本晃一)、「(側款の字は)『北魏楷書を筆で習得しなければ上達しない』と常日頃から文字を書くよう指導を受けた事が思い出される」(小池大龍)など、作品の見所とともに河野先生の言葉も紹介しています。

 

 

若き日の精進ぶりと情熱を伝える臨書や印稿も展示。手紙で師の指導を受けた印稿には、「車輪の部分墨だまりやかけた所を思い切って用いてよいでしょうか」(河野)、「この程度でよいでしょう」(生井)などの書き込みがあり、弟子の真摯な問いに師が丁寧に答える応答ぶりがうかがわれます。
また、二世中村蘭台の扁額や、西川寧が弟子の生井子華に与えた折手本とそれを河野先生が臨書した折本を共に展示するなど、初世・二世中村蘭台~西川寧~生井子華~河野先生と続く印人の系譜も浮かび上がらせています。

 

西川寧の折手本(展示ケース内の奥)と河野先生による臨書(手前)

 

師・生井子華との間で交わされた印稿(上)

 

「河野隆遺作展」の図録は税込み3000円。巻末に綿引滔天、遠藤彊、岡野楠亭、真鍋井蛙の4先生が追悼文を執筆しています。

なお、篆刻美術館では12月15日まで第29回「全日本篆刻連盟役員展」も開催。理事長の和中簡堂先生をはじめ67人の作品のほか、河野隆先生の遺作を一室に集めて展示しています。

 

【今後予定される河野隆先生の遺作展】
・第20回晨風会展遺作展示 2020年3月17日(火)~22日(日) 日展新会館
・第33回全日本篆刻連盟展~特別展観河野隆遺作展~ 2020年5月11日(月)~17日(日) セントラルミュージアム銀座
・河野隆遺作展 2020年10月31日(土)~12月20日(日) 成田山書道美術館

 

 

 

 

2019年11月11日(月)15:51