関連書道展
台東区立書道博物館で中村不折展
明治から昭和の初めにかけて活躍した洋画家、書家の中村不折(1866~1943年)の歩みを紹介する「中村不折のし・ご・と-画家として、書家として-」が東京・根岸の台東区立書道博物館で開かれています。不折の書、水彩、油彩、挿絵、看板・商品ラベル等と、正岡子規、森鷗外、夏目漱石ら知人・友人の書簡ほか60点が並んでいます。
不折は、洋画家として実績を積む一方、新聞・雑誌の挿絵でも名を上げ、文豪・夏目漱石は自著「吾輩は猫である」の人気を不折の挿絵のおかげだとして、礼状を認めました=写真下=。
不折は日清戦争(1894~95年)に際して記者として中国大陸にわたり、中国の石碑や建築に魅せられます。帰国後、拓本や資料を集め始めました。書への本格的な関心もこの流れの中で生まれたようです。
20世紀初頭にフランスに留学し、帰国後は文展(現在の日展)の審査員を務めるなど洋画家としての地位を築いた不折は、一時、体調を崩し、群馬・安中の磯部温泉で湯治をします。この時に書いた書「龍眠帖」が思わぬ転機をもたらします。書は若い頃に長野で手習いをした程度で、それ以降はもっぱら古典に学ぶだけでしたが、「龍眠帖」を見た俳人・随筆家の河東碧梧桐が、その素朴で明るい作風に感銘を受け、この書は公に刊行されることになります。これを機に不折の書は、人気を集めることになりました。「龍眠帖」は不折の代表作のひとつとなります。
1936年(昭和11年)には、不折はみずから「書道博物館」を設立し、集めた書のコレクションの保存、展示を始めました。43年(昭和18年)に不折が没した後は中村家が管理していましたが、95年(平成7年)に建物と収蔵品すべてが台東区に寄贈され、2000年(平成12年)に台東区立書道博物館として新たに開館。今年、照明のLED化など設備改修を行い、9月に再オープンしました。
常設展示を行う本館では、春秋戦国時代の古文、秦~漢時代の篆書、三国時代の隷書が並記され「東洋のロゼッタ・ストーン」と呼ばれることもある「三体石経(さんたいせきけい)」(三国時代・3世紀)などが展示されています=写真右=。
「中村不折のし・ご・と-画家として、書家として-」展
台東区立書道博物館(東京・台東区根岸)
2018年9月26日~12月16日
http://www.taitocity.net/zaidan/shodou/
2018年11月9日(金)11:44