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東京展ギャラリートーク 吉澤鐵之先生
吉澤鐵之先生 9月1日、国立新美術館
吉澤鐵之先生(漢字)が第35回展記念の特別展示「読める書への挑戦」の解説をされました。
吉澤先生は「展覧会の見方として、たとえばこの中で自分に1点もらえるとしたらどれが欲しいか、という目で見ると見方が鋭くなります」とユーモアを交えて聴衆に語りかけました。
吉澤先生が、自分の「欲しい」と思う作品に挙げたのは西川寧先生の「山崎節堂宛書翰」でした。「ちょっと絵も入っていて風雅ですね。飾っておきたくなります」。そして「手紙は人柄がしのばれ、心が通じる。最近は書家の方でも手紙を書かない方が多くなりましたが、できるだけ書いていただきたい。書をやっていない方に書のすばらしさを伝えるには、手紙が一番だと思います。手紙を開くと墨の香りがして、流麗な字でいい言葉が書いてある。相手の方も大事に取っておいてくれますよ」と述べられました。
さらに「手紙は習うわけにも、教えるわけにもいかない。たくさん書かないとうまくなりません。空海の『風信帖』も手紙です。ぜひお友達同士で文通し、気に入った手紙があったら表具をして自宅に飾る楽しみも持っていただきたいと思います」と呼びかけられました。
吉澤先生が所属する日本書作院の創立者の一人、淺香鐵心先生の作品「鬼の霍乱」の前では、淺香先生が心筋梗塞を患って以降、右肩下がりで独特な味わいの書を書かれるようになったことを説明。また、作品に捺された二つの落款印を「あれは私が刻(ほ)った印です」と明かして聴衆を驚かせました。調和体作品には通常の篆書ではない字の落款印をと、淺香先生から望まれたとのことでした。
特別展示に続き、現役の幹部書家の作品を解説したあと、自作についても解説。中国・唐代の詩人、韓愈の詩から採った「風饕」の二文字で、「いつもは自分の漢詩を書きますが、今回は大きな字を書きたかった。面白い字だと思って選びました」と話し、ひときわ目を引く銀色の料紙は「古い屏風から剥がしたものです。新しい銀紙だと墨を弾いてしまいますが、べったりと載ったので気持ち良く書きました。秋の日展に出す作品は、この二文字を入れた漢詩を作って書いたものです」と制作のエピソードを披露されていました。
2018年9月2日(日)17:00