東京展ギャラリートーク 吉澤大淳先生

吉澤大淳先生 8月27日、東京都美術館

 

吉澤大淳先生(漢字)が読売大賞・準大賞、読売新聞社賞の作品について解説されました。

 

吉澤先生は、読売大賞に輝いた森上洋光さんの漢字作品について「中国・唐代の詩の一節から選んだ26文字を篆書で表現されている。荘厳な儀式が終わって夜明けの光が降り注ぐという内容のようです。ご本人のお話では4月から何度も書き直し、重厚さと美しさに加え、華やかな表現を心がけられたようです」と紹介。「小篆を綿密に重ね、重厚で荘厳な感じのする様式美に仕立てられています。墨量も非常にうまくのっている。すごい腕だなと思うのは、墨が多いと空白が潰れてしまうものですが、非常にうまく残している。しかも細部まで神経が行き届きながら、全体感を失わない。なかなかできない技術であり、作品であると思います」と評されました。

 

読売準大賞の小出聖州さんの漢字作品は「近年出土の漢代の隷書の肉筆を基にしている。隷書の一番の基本は垂直・扁平・左右相称、字が正面を向くことですが、それをやや右肩上がりに工夫されているのが特徴。その中で安定感とバランスが非常にうまく取られています」と指摘されました。

 

また、同じく準大賞に選ばれた井谷五雲さんの篆刻作品について「大胆な構成で、造形、白の空間の取り方、字の粗密などの変化が非常にすばらしい。篆刻の皆さんは筆の代わりに字を刻するのですが、線質をじっくり見ていただくと、力強かったり複雑だったり、微妙な変化が見て取れます」と見どころを説明されました。

 

吉澤先生はかな作品、調和体作品も解説し、「人の作品をよく見ることも、自分の書作を高める上で大きい。漢文、和文、小説、随筆、語録、紀行文、詩歌、童謡、民謡など、この人はこういう題材を書いているんだと思って見るのも楽しい。また、どのような筆・墨・紙や印を使っているかなど、いろいろな角度から自分の意を留めれば、そこに魅力が感じられます」と語られました。

 

 

 

 

2018年8月30日(木)16:40