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東京展ギャラリートーク 和中簡堂先生
和中簡堂先生 8月26日、東京都美術館
和中簡堂先生(篆刻)が、篆書の作品を中心に、読売大賞・準大賞、読売新聞社賞、読売俊英賞の作品について解説されました。
和中先生は最初に、読売大賞を射止めた森上洋光さんの漢字作品を紹介。秦の始皇帝が文字統一した時に定められた「小篆」を主として用い、日々のたゆまぬ鍛錬によって鍛え上げた線質でしっかりとまとめており、「他を寄せ付けないくらい、堂々とした作品だと思います」と称えられました。
また、「小篆は筆力の鍛錬、総合的な書の学習に欠かせないのではないかと思っています。読める、読めないは別にして、漢字の作家にせよ、かなの作家にせよ、ぜひ書いてみていただきたい」と学習を薦められました。
読売準大賞の小出聖州さんの漢字作品「劉基詩」は、1970年代に発掘された馬王堆漢墓(中国・湖南省)から出土した肉筆の文字資料に普段からよく親しみ、「新出資料を手中に収めているという点で新しい感覚の書」と紹介。たとえば書き出しの「涼風」の「風」の「虫」の字が非常に簡略化して書かれており、「漢字が変遷の歴史をたどってきたことが細部に現れているのも見どころ」と説明されました。
同じく読売準大賞の井谷五雲さんの篆刻作品「飲氷亞蘭」は、「非常に躍動感があり、堂々としています。亞の字は左上に刻(ほ)り残したような塊を残しており、これが強さを表しているのも面白いと思います」と評されました。
また、読売新聞社賞に選ばれた北里朴聖さんの漢字作品「明到衡山與洞庭 若為秋月聴猿聲」を、「篆書から隷書、隷書から草書に転じていく文字自体の変化をとらえた、今までにない表現方法だと思います」とその斬新さを指摘。たとえば「若」「洞」の字の中にある「口」を、「普通は丸く書いて蓋をするところを、3つの点だけで表している」と、文字が簡略化されていく過程をそのまま表現していることに注目されました。
和中先生は、「伝統書は『読めない』『分からない』と思われがちですが、視覚的、絵画的にとらえ、迫力があるなと感じていただいてもよろしいと思います」と、書の楽しみ方をアドバイス。篆刻では「気に入った篆刻作品を縮小コピーし、ご自分の作品にちょっと貼ってみて、落款印として合うか考えてみるのも面白いと思います」と述べられました。
かな作品で色の付いた料紙が目立つ展示室では、「色紙(いろがみ)に書くのはある意味で勇気が要ることです。墨がなかなかのらない紙もありますし、かなりの筆力が必要です。私も昔、色紙を使って書いた作品を青山杉雨先生にお見せしたら『色紙はね、君、下手だということが一番分かってしまうよ』と叱られ、使い方を誤ると逆効果になることを教えられました」とユーモラスに思い出を語られました。
最後に和中先生は「われわれはやはり古典というものを、古いようで一番新しいと思っています。それが『本格の書』につながっていくということだろうと思います。自分自身も伝統に根ざしてしっかりやっていかなければと、常々思っているところです」と述べられました。
2018年8月30日(木)16:39