東京展ギャラリートーク6 吉澤鐡之先生

第34回読売書法展東京展は3 日、最終日を迎えました。会場の国立新美術館では、午後2時から、読売書法会常任理事の吉澤鐡之先生=写真 中央左=によるギャラリートークが行われました。

 

読売書法会最高顧問の先生方の作品を中心に鑑賞のポイントを解説されましたが、落款、紙に着目したユニークなお話でした。

 

中でも落款印は、造形上の効果だけでなく、彫られた字句の内容、狙い、背景にも踏み込んだ説明が参加者の方々に新鮮だったようで、作品に向かって身を乗り出すように聞き入る人も。

 

かな作品については、古筆作品には落款印がないことにふれ、どちらかというと控え目な使い方が多いことを指摘されました。その上で、白文を用いて赤を際立たせ、作品との調和を生みだした工夫や、2つの印を用いて、その朱文・白文の効果的な組み合わせによって造形美が作り出された例を、作品に即してお話しになりました。目立たせないように丸くつくられた印については「控え目でありながら印象に残り、格好いいですね」という言葉も。
押印は力のいる作業でもあります。90歳を超えられた先生方のご健在ぶりがこうした点でも伝わってきます。また、押印は感覚が大事で、言葉で教えられるものではなく、学び取る以外にありません。そうした吉澤先生のご指摘に、聴衆の皆さんは印にも匠の味わいが込められていることを実感したようでした。
漢字では大きな印を用いた作品も。印には書家の人柄が反映される面もある、と指摘されました。 中国風に姓を一字に省略した姓名印 、書家の主義主張を反映しつつ造形的効果を生む遊印の説明をされると、急いでメモをとる姿も見られました。また、作品に象形印を見つけてほほえむ方もいました。
この後、聴衆のリクエストに応えて自作の解説も行われました。ご自身の近作の五言絶句「回教徒渡海」を題材にした作品について、詩作の背景とその造形的な意図について説明されると、作者ご本人ならではの話に、会場の人々も書作に参加しているような気持ちの高ぶりを感じているようでした。

 

 

 

 

2017年9月4日(月)13:23