東京国立博物館で「特集ひらがなの美ー高野切ー」開催中

東京・上野公園の東京国立博物館で「高野切」に焦点を当てた企画が開かれています。

本館2階特別第1室で 開かれている「特集 ひらがなの美ー高野切ー」で、古筆の中で最高の名品として名高い『古今和歌集』の写本「高野切」が、第一種から第三種までそろって陳列されています。気品ある第一種、雄渾な第二種、端正な佇まいと軽やかさが共存する第三種など、三者三様の書風が浮かび上がります。3人による高野切以外の書などと合わせ、合計21件を紹介。筆跡と共に、雲母や金銀の砂子などを用いた上品な料紙も見どころのひとつでしょう。7月1日まで。

 

 

『古今和歌集』は調度用手本の題材として尊重され、多くの書写本が伝存します。「高野切」はその最古のもので、『土佐日記』の作者紀貫之の筆と伝承されますが、実際は貫之の時代よりも100年ほど後の11世紀半ばに、3人の能書によって分担執筆された寄合書(よりあいが)きです。

 

第一種の筆者は、巻頭・巻末を任された能書(書の名手)で、「高野切」は「古今和歌集巻第九断簡」(春敬記念書道文庫蔵、展示は6月3日まで)と重要美術品「古筆手鑑『浜千鳥』下帖より古今和歌集巻一 断簡」(個人蔵)が出品されています。

流れるような繊細な連綿を用いながら落ち着いた洗練さを見せ、高い品格が感じられます。和歌文学の世界と書の美の世界の融合は、宮廷貴族の雅の美意識を浮かび上がらせるかのようです。

重要美術品「大字和漢朗詠集切」(東京国立博物館蔵)も第一種の能書によるものです。

 

第二種は力強い連綿、リズミカルな運筆、やや右肩上がりの筆法が特徴で、漢字と仮名の見事な調和、雄渾さと優美さが目を引きます。筆者は源兼行。「高野切」の「手鑑『毫戦』より古今和歌集巻五断簡」(東京国立博物館蔵)に加えて、「和漢朗詠集断簡(関戸本)」(個人蔵)や「万葉集 巻四断簡(栂尾切)」(東京国立博物館蔵)も出品されています。また、企画陳列とは別になりますが第4室にも源兼行の「和漢朗詠集断簡(関戸本)」が展示されています。

 

第三種では、重要文化財「古今和歌集巻十九断簡」(東京国立博物館蔵)が、のびのびした筆運びの魅力を感じさせます。第三種の能書による重要美術品「古今和歌集巻十八断簡」(個人蔵)、国宝「元暦校本万葉集 巻一(古川本)」、重要文化財「手鑑『月台』より和漢朗詠集断簡(法輪寺切)」(いずれも東京国立博物館蔵)や、重要美術品「和漢朗詠集断簡(伊予切)」(個人蔵)、重要美術品「和漢朗詠集断簡(法輪寺切)」(個人蔵)も展示されています。

 

 

東京国立博物館では、「ひらがなの美」展示のほか同じ本館2階の「日本美術の流れ」で華厳経ほかの経典(1、2室)、日本の禅僧の墨跡(3室)、江戸時代初期の三筆や唐様の書(8室)などが展示され、日本の書を幅広く鑑賞することができます。また、東洋館 4階第8室では中国・漢時代の拓本などが陳列されています。

 

2018年5月18日(金)17:58