関西展 祝賀会懇親会を開催

読売準大賞の7人が舞台に並び、一言ずつスピーチ

 

9月14日正午からホテルグランヴィア京都で関西展の入選・入賞祝賀懇親会が開かれました。

読売準大賞7人の皆さんをはじめとする入選・入賞者が紹介され、お祝いムードに包まれました。

 

井茂圭洞先生の挨拶

 

 

 

 

2019年9月15日(日)12:00

東京展ギャラリートーク⑫_最終回 和中簡堂先生

和中簡堂先生(篆刻) 91日、国立新美術館(東京展最終日)

執行役員以上の先生方の作品を中心に解説されました

 

和中先生は「この部屋(第一室)は日本の書道界のトップの先生方の作品が揃っており、今日の書壇で一時代を画するような作品ばかり」と述べ、漢字、かな作品を一点ずつ解説しました。

 

井茂圭洞先生(かな)の作品は「20年ぐらい前から現在のように大胆で鋭い、余白が特筆して美しい作品に変わられた」と振り返りました。梅原清山先生の大字作品は「篆書で骨格を培った迫力(ある字)をお持ちで、途中から北魏の荒々しい楷書に魅力を感じて字典(『北魏楷書字典』)まで編纂された。ここ10年ぐらいは楷書一本で書かれているが、表現方法として一時代を画するものだと思う」と述べました。

樽本樹邨先生の作品は「北魏の龍門造像記一本で押し出した力強い作品。左上の空いた空間は、まさしく龍門石窟の仏像や造像記をほうふつとさせる。のびやかさと緊張感を持ち、一字一字ゆるぎのない書風」と説明しました。

 

 

 

 自分が専門とする篆刻について、和中先生は「中学の頃から篆刻をやっていますが、書も篆刻も同じで『篆刻は簡単です』とは言えない。中国では『詩書画篆刻一致』、文人というものは詩・書・画・篆刻のすべてに精通しないと一人前ではないと言われ、篆刻もやる先生方が結構多い。やはり突き詰めていくと書にはない篆刻の面白さがあります」と指摘。「篆刻は空間の美しさ、造形の強さは作る人によってまさに『千変万化』の世界で、表現方法の違いを見ていただければ嬉しい」と述べました。

また、「かつては東京の小林斗盦(とあん)先生、関西では梅舒適(ばい・じょてき)先生という二人の大家がいらして、『東の小林、西の梅』と東西の篆刻の違いが強調されて今に続いていますが、実はそうではありません。小林先生、梅先生が亡くなられて10年ぐらい経ちますが、関東と関西でここ67年ぐらい前からお互いの会員を呼んで大きな勉強会を開いています。関西の篆刻は情緒的であるとか、趣味的であるという言われ方をしたこともありますが、志向するところは古典を中心として篆刻を表現していくことであり、関東・関西の篆刻が違うというかつての幻影はなくなりつつあると思います」と篆刻界について説明しました。

 

読売大賞・準大賞の作品も解説。読売大賞に選ばれた岩井笙韻先生の「荘子語」(流光其聲蟄蟲始作吾驚之以雷霆)は「最初から最後まで力の限りを尽くして書かれたというような、他を圧する迫力を感じます」と作品に横溢する気迫を挙げ、「中国の春秋戦国時代の篆書は地域によって文字が違い、同じ篆書でも南の方では違う形の文字が使われる。馬という文字もそうです」と説明。「馬の字を、目玉みたいな形の下に二本線を書くのは斉や魯──今の山東省あたりの国で使われた文字です。(この作品で)驚という字の『馬』は、秦などの地域で使われた形。きれいに一つの地域、のちに秦の始皇帝が制定する篆書に沿って書かれている点にも、普段からの勉強が出ています」と述べました。

 

 

読売準大賞の黒田玉洲先生の篆刻作品を解説

また、読売準大賞の篆刻作品である黒田玉洲先生の「絶岸頽峰」(孫過庭「書譜」)について、「春秋戦国時代の古璽には官璽(官職印)と私璽(私印)がありますが、この字は官璽でよく使われるスタイル。古典主義に基づく迫力のある字です。白文ですが、白い文字が浮き立って出てくるような面白さがある」と評しました。

さらに「古代の『絶』という字は、今の糸へんの文字とは全然違う。『峰』という字も、山へんのない、『ホウ』という音(おん)でつながっていく字。今の文字と構造が違っているのも面白いところです」と篆刻の見どころを解説しました。

 

 

和中先生は「篆刻をやっていると、印が粗末に押されている作品にはどうも少し点が辛くなる。やはりきれいに、きちんと押してほしいし、作品の大きさに合った印を押していただきたい。どれがどうとは言いにくいところで、その辺はお察しいただければ・・」と笑わせ、「(作品の最後に筆で)雅号を書いて、雅号の印を押すというのも、本当はあまり知恵がない。風雅な世界に遊ぶということも認識して、雅号だけでなく、本名や自分の書斎の名前、どこで生まれたとかどこに住んでいるとか、いろいろなものが印に使えます。作品に合わせて使い分けていただければ」とアドバイスしました。

 

最後に、求めに応じて自作を解説。「西周の中~晩期の文字を使うことにこだわって作りました。地域によっては使われていない文字もあるし、たとえば第一字目に刻った『属』という字は、地域によっては部分的にごそっと省いてしまう所もある。地域で使われていた文字を隈なく押さえ、作品を作り上げるのは大変な作業です」と制作の苦心を語りました。

 

和中簡堂先生の作品

 

(東京展ギャラリートークのリポートは、読売新聞東京本社事業局専門委員の高野清見が担当しました)

 

 

 

2019年9月15日(日)11:00