東京展イベント「席上揮毫・篆刻会」を開催

東京展が開かれている国立新美術館(東京・六本木)で25日、席上揮毫・篆刻会が開かれました。読売書法会の幹部書家の先生方3人が、「令和」新時代の幕開けにふさわしい言葉を「漢字」「かな」「篆刻」「調和体」で表現し、会場の3階講堂を埋めた約300人の観客を堪能させました。

 

東京展実行委員長である一色白泉先生の司会で進行。まず、篆刻の辻敬齋先生が「荘子」外篇の「在宥」にある「淵默而雷聲」(淵黙して雷声し)という言葉から、「淵默」の二文字を刻(ほ)りました。理想の君子を論じた文章の一節で、「深い沈黙」の意。辻先生は、自分が師事した故・小林斗盦(とあん)先生にも「淵默雷聲」の作品があると説明しました。

辻先生は「篆刻も書の一分野であり、筆で書いたような筆意を石にどう入れるか、常に考えながら作品に取り組んでいる」と前置きし、起筆と終筆が単調にならないよう留意したり、滲み、かすれなど、筆のような雰囲気を出すための工夫をしたりしていると述べました。また、設計図(印稿)を入念に準備しても「失敗や偶然もあって思うようにならないところもある。しかし、それも面白い」と篆刻の魅力を語りました。

 

 

 

 

 

かなの岩井秀樹先生は、平安時代に仁明天皇、清和天皇の大嘗会(だいじょうえ)で新穀を奉る「主基(すき)国」に選ばれた土地を詠んだ「古今和歌集」の和歌を揮毫しました。

まず調和体で、「真金(まがね)ふく 吉備の中山 帯にせる 細谷川の音のさやけさ」「美作(みまさか)や 久米の皿山 さらさらに わが名は立てじ 万代(よろづよ)までに」の二首を一枚にまとめ、次にかな作品として「美作や」の一首を披露しました。

岩井先生は「今年にちなんで選びました」と和歌の由来を述べ、「美作の」のかな作品における散らし書きについて、文字のリズムの変化、墨継ぎの場所の選択による全体のバランスの取り方など、制作上の細かい工夫を説明しました。

 

 

 

 

漢字の有岡シュン崖(※シュンは「夋」に「阝」)先生は、新元号「令和」の出典となった万葉集の「梅花の歌三十二首」が詠まれた宴にちなみ、江戸時代の儒学者・伊藤仁斎がひとり酒を飲みながら庭の梅を愛でる愉しさを詠んだ七言律詩を三尺×八尺の紙に揮毫。「三×八に56文字、3行を入れるのはなかなか難しい。もう少し行間を詰めて4行目に(余白を)残し、そこに落款を入れた方が良かったかもしれない」と素材を作品とするまでの試行錯誤を語りました。

 

続いて、自作の言葉「令和の緞帳があがった。進化に向けて人々はどう演じてくれるのだろう」を調和体で書き上げると、「最後の8文字は平仮名ばかりで漢字が一文字もない。また、前半では『が』『ど』『だ』と濁点が多い。これをどう処理してやろうかと考えた」と、字の強弱や間隔の取り方などの工夫を説明しました。

最後に有岡先生は、「読売書法展は古典に立脚した中から生まれる新しい書を標榜しており、皆さんも調和体にチャレンジしていただきたい。その時に、調和体をまったく違うものだという認識に立つ必要はない。日頃から漢字の古典を勉強しているなら、それを生かしつつ平仮名をどう合わせるか、造形などを工夫されたらいいでしょう」と観客にアドバイスしました。

 

 

2019年8月27日(火)15:39

第2回 北斗文会展

第2回 北斗文会展

 

2019年8月27日(火)~9月1日(日) 東京・鳩居堂画廊

 

北斗文会(代表:和中簡堂)

 

 

2019年8月27日(火)10:00