和洋女子大学で夏期公開講座(書道)50周年記念講演会

個別発表に続いて行われたパネルディスカッション

 

和洋女子大学(千葉県市川市)で1970年に夏期公開講座(書道)が開設されてから50周年を迎えたのを記念して、87日に同大で「“書文化”の未来」をテーマにしたパネルディスカッションが開かれました。学生や書道関係者など約150人が参加し、3時間近くにわたる講演と討議に耳を傾けました。

 

パネリストは加藤東陽・東京学芸大学名誉教授(書写書道教育の分野から)、平形精逸・静岡大学名誉教授(高校・大学書道教育の分野から)、土橋靖子・大東文化大学特任教授(書家としての視野から)、大橋修一・埼玉大学名誉教授(日本文化としての視野から)の4先生。進行役を湯澤聡・和洋女子大学教授が務めました。

 

まず、パネリストの4先生が個別に意見発表を行いました。

加藤先生は、来年度から小学校の新しい学習指導要領が実施されることに伴い、小学校~高校の書道教育がどのように変わるかを説明。他の教科と同じく、書道も「普段の生活に生かされることを大きな目標にしている」と指摘し、毛筆の運筆を硬筆(鉛筆)の基礎作りと位置づけることや、多様な表現を持つ文字文化の豊かさを学ばせることなどを挙げました。

 

加藤東陽・東京学芸大学名誉教授

 

平形先生は、高校・大学の書道教育の現状と課題を紹介。これまで高校では小中学校の書写教育と切り離された「芸術科書道」として扱われていたのが、学習指導要領「現代の国語」の「内容の取扱い」の中で、「書くこと」に関する指導について「中学校国語科の書写との関連を図り、効果的に文字を書く機会を設けること」という一文が加えられたことを指摘。「戦後70年の高校国語で、初めて書写が位置付けられたのは画期的」と述べました。

また、大学における書道教育が中国文学科や国文学科などに従属する扱いとされてきたのが、近年は書道専攻を設ける大学が増えたと説明。その一方、地方大学の教育学部は教員養成を主目的としているため、書の面白さを学ぶのは二の次、三の次となっており、教職に就いても子どもたちに書の楽しさを教えられないことなどを問題点に挙げました。

 

平形精逸・静岡大学名誉教授

 

土橋先生は、高大展(全日本高校・大学生書道展)の最終審査に関わった体験から、「本審査まで残った作品群は本当にうまい。しかし、大学を卒業しても大好きな書が生かせる職に就ける人はわずかしかいない」と受け皿があまりに少ない現実を指摘。また、社会における書芸術の認知度の低さを憂い、「ある大企業に招かれた時、貴賓室に向かう廊下に有名画家の絵画が並んでいたが、その中に書がなく、書が芸術として認められていない悲しさ、空しさ、くやしさを覚えた。興味を持って下さる方が一人でも増えるよう、書芸術の地位向上に努力していきたい」と語りました。

 

土橋靖子・大東文化大学特任教授

 

大橋先生は、「欧米のアートでは『なぜあなたはこの作品を作ったのか?』と言われた時に説明できないと、作品として成り立たない。書も、ただ書ければいいというのではなく、どんな意図で作ったのかを自分の言葉で文章化し、発信することが求められる時代だと思う」と述べました。

 

大橋修一・埼玉大学名誉教授

 

その後の討議では、来年度から小学生の書写教育で使う「水筆」を硬筆(鉛筆)と同じ持ち方で指導することの是非や、大学の教員養成で筆を持つ時間がきわめて少なく、児童に教えるだけの十分な技量が身に付かない問題などが話し合われました。

 

 

 

 

2019年8月15日(木)10:01

第5回 由源 浪華女流書道展

第5回 由源 浪華女流書道展

 

2019年8月20日(火)~25日(日) 東京・鳩居堂画廊

 

由源社(代表:尾崎邑鵬)

 

 

2019年8月15日(木)10:00

第15回 鑒古印社篆刻展

第15回 鑒古印社篆刻展

 

2019年8月19日(月)~25日(日) 銀座幸伸ギャラリー

 

 

鑒古印社(代表・内藤富卿)

 

 

 

 

2019年8月15日(木)09:52