東京展ギャラリートーク⑩ 市澤静山先生

市澤静山先生(漢字) 8月30日、国立新美術館

執行役員以上の先生方の漢字、かな作品を中心に解説されました。

 

 

市澤先生はトーク冒頭、手書き文字と、小学校などで子どもたちに指導する教科書の活字体との違いについて解説しました。

新元号「令和」が発表されたあと、学校の先生が児童・生徒から「令」の字について「テレビに映った字と(学校で習う字が)違う」と言われる事態が起きたことを挙げ、「どちらが正しいかと言えば、両方正しい。字というものは一通りということはあり得ず、いろいろな字があることを認識してほしい」と述べました。

また、筆順にも複数あることを説明し、「小学校の先生は、子どもたちが書く字についておおらかであってほしいと思う。教えた通りに書かなくても、むやみに否定しないでほしい」と望みました。

 

尾崎邑鵬先生(漢字)の作品「汧殹沔々」(石鼓文)について、市澤先生は「尾崎先生は1924年生まれ。非常に激しく書かれているが、腕力があれば書けるというものではない。むしろ大事なのは気です」と指摘。「筆先が紙に食いついていますが、筆の切っ先が働いてこそ、自分の精神が盛り込まれた強い線が書けるんです」と述べました。

 

古谷蒼韻先生(漢字)の遺作「飲中八仙歌」(杜甫)は「流れが非常に自然な動きで、次から次へと動いていくのが分かります。速いかと思えば、かなりゆっくり書かれた部分もあり、墨もあまり付けないで、できるだけ保たせて書いている。手の動きが非常に安定しています」と絶妙の運筆を指摘しました。

 

かな作品についても一つ一つ解説。井茂圭洞先生(かな)の作品「無常」(万葉集)では、「筆の先がよく利いているのが分かります。紙に筆先が食いついている。他のかな作家と比べると分かるが、筆を紙にこする度合いが違う。また、かなはどちらかと言うと曲線が多いが、まっすぐな線が多い」と、漢字書家の立場からの視点も交えて特色を挙げました。

 

市澤静山先生の作品(右上)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2019年9月11日(水)11:30