特別企画 「高校生」この1点
林円蘭

漢字部門・入選(四国展)
林円蘭
米芾「臨米芾尺牘」(『米芾尺牘集』)
講評:骨法ある行書を伸びやかに溌剌と表現
四国展では9点の入選作品が展示されました。過去最多の展示数で、一般の方々に劣らない熱意ある取り組みが光るとともに、仮名や調和体が目立ったのも特長でしょう。
その中で紹介するのは、林円蘭さんの漢字臨書作品。細長い紙を2枚、縦長形式に活用し、骨法ある行書を伸びやかに溌剌と表現しています。墨量も豊かで渇筆は控えめ、白い紙面との対比も鮮やかです。肥痩ある線には、筆の弾力を最大限引き出そうという狙いもうかがえ、それらが調和した秀作へと仕上がっていました。
作品制作では文房具の選定も重要です。仮名作品や、仮名を基調とした調和体では、料紙を活用することも多く、模様や色と墨色、文字のレイアウトにも配慮が必要です。また漢字作品で用いる加工紙でも、墨が乾いた後の発色を見定めた上で、効果的に筆を揮う必要があります。篆刻では、印材や印刀、印泥や印箋など作品表現には不可欠な存在もあります。
文房四宝(筆・硯・墨・紙)は、時代に応じた素材や加工の工夫を経て、筆文字とともに進展した歴史があります。目指す作品表現には、文房具の下支えがあることにも配慮し、その恩恵に改めて感謝しながら、書に取り組める喜びを味わっていきたいものです。
第41回読売書法展 四国展実行委員長
読売書法会常任理事
森上洋光

