作品

漢字部門・東京展

小林青葉 『無名氏』

講評:線美に魅了された一作

 昨年1,000点を超えた高校生出品ですが、今41回展では更に約200点の増となりました。


 少子高齢化による書道人口の減少が叫ばれる中、若い世代の人たちが、書美に惹かれ積極的に書作にチャレンジする姿勢の現れとして、書の将来に光と希望を持たせてくれます。これ等若者の人達が「本格の書」を目指し着実に成長してくれることを願う一方、指導的立場にある者の努力と責任の大きさを痛感させられます。


 さて今回展での高校生の作品を通覧した感想ですが、当然のことながら漢字、かな作品では臨書作品がその多くをしめ古典の習熟につとめる態度に好感を覚えました。調和体作品においては、漢字、かなの古典学習で得た造形などをうまく組み合わせ表現過多に陥ることなく自然体をもって調和させている作が多数見られたことにも好ましく受けとめられました。


 このようなことを感じながら会場を歩いている時、そのインパクトの強さと圧倒される線美を持った一作に足が止まりました。


 その作は、小林青葉さんの隷書作品でした。肉厚な線ながらその線は澄みきっていて、痛快感と爽快感を合わせ持つ秀作として目に映った。書は究極のところ造形美と線美ということになりますが、小林さんの作は造形もさることながら線美に魅了される一作でした。


 若い世代の技量的吸収力にいまさらながら驚かされました。今後更に力を重ねて下さい。

第41回読売書法展 東京展実行委員長

読売書法会常任理事

有岡