作品

漢字部門・入選(関西展)

松尾和香 『王漁洋詩』

講評:着実な歩みに拍手

 第40回読売書法展で高校生の出品が初めて1,000点を超えました。「本格の輝き」を基本理念に掲げている読売書法展だけに生半可な練習では絶対入選することが難しいなか、若い高校生のエネルギーがその壁を見事に突破しました。常日頃、古典練習に相当の時間を費やし、青春の1ページを捧げた証だと思います。


 そのなかで松尾和香さんの作品に注目しました。明末清初の能書家の傅山の作を中心に鍛錬した跡が明確に表出され、動きの柔らかさ、スケールの大きさ、余白(要白)の美しさが際立ちます。旋律の美しい音楽を聴いているような心地良さが感じられ、その非凡な才には驚くばかりでした。


 一般の方でも難しいのに若い高校生が入選した快挙。伝統的文化を継承し、本格の輝きを目指して一歩一歩着実に進む姿に、拍手を送りたい心境になりました。普段から古典と真摯に向き合い、試行錯誤を繰り返して成長していく姿を想像しながら、会場を後にした次第です。

第40回読売書法展 関西展実行委員長

読売書法会常任理事

伊藤一翔