大関悠吾「王漁洋詩」

漢字部門・入選(東京展)

大関悠吾

「王漁洋詩」

講評

 東京展に展示された高校生の作品の中で、大関悠吾さんのこの作品は、確かな運筆で動きに切れ味と力強さがあり、いかにも若者らしい爽快なリズムで一貫する楷書である。


 細部をみると、蔵鋒(ぞうほう)*と露鋒(ろほう)*の使い分け、起筆の強さと終筆の切れ味、線の太細の変化、豊かな墨量を疎密の変化に活かしていることなど、とてもよく工夫されている。字形の面で多少の疑問点はあるのだが、迷いなく自分の動きで書き切っているので立派な作品となった。

書を学ぶ若い世代へのメッセージ

 高校生の作品だけが展示された四室を巡ってみて、自分が書に志し、誰もいない書道室で臨書をくり返し、創作作品の中に生きる悩みを封じ込めていた高校時代の思い出が蘇りました。


 書を学ぶからには、自分自身の力で古典をみつめ、その人物や時代背景まで知るように心懸けたいものです。そして自己表現の喜びの経験から、書を好きになる若者が多くなることを願っています。

第38回読売書法展 東京展実行委員長

読売書法会常任総務

牛窪 梧十

蔵鋒(ぞうほう)…筆の穂先が点画の端に露見しないように書くこと

露鋒(ろほう)…筆の穂先が点画の端に露見するように書くこと