著作物利用の手引(2021年版)

 読売書法会は知的財産権保護の観点から、書作品を制作する際の著作物使用に関する正しい手続きの励行に取り組んで来ました。その一環として、他の書道団体に先駆け、著作権管理団体である日本文藝家協会(JWACC)、日本音楽著作権協会(JASRAC)と協議を重ね、両団体の理解と協力を得て読売書法会事務局が一括して申請することにより、両協会の委託者については出品者が個々に手続きをしなくても済むようになっています。
 読売書法展に出品される方は必ず以下をお読みいただき、資料が必要な場合は事務局へご請求ください(出品票には同封されていない資料もあります)。


  • ※ここで紹介する方法は読売書法展に限定したものであり、本展以外の公募展や会派・社中展には適用されません。また、これ以外の方法で手続きを行い、著作権者などとトラブルが生じても事務局は責任を負いかねますのでご了承ください。

著作権について知っておきましょう

 著作権法では、著作物の権利の保護期間について「創作された時点から著作者の死後50年まで(2018年12月30日から「死後70年」に改正)」と定めています。違反すれば損害賠償請求などの訴訟を起こされる恐れがあり、罰金やひどい時には懲役を科されることもあります。


 著作権には、(1)「著作物の内容や題号を他人が無断で変えてはならない(無断改変の禁止)」という決まりがあります。また、(2)作品を公表する権利(公表権)や、(3)著作者名の表示(氏名表示権)という決まりもあります。一般的には、「作品内に著作者名および出典を記載する」、「作品脇に題名などのキャプションを掲出する」などの方法で表示しますが、著作権者から特に指示があった場合、その方式に従って表示しなくてはなりません。


著作権の存続・消滅の確認

 読売書法展に出品するにあたり、作品題材の著作権が存続しているかについては各出品者で確認ください。


著作権が保護されるのは「死後70年(2018年12月30日改正)」までですから、第37回展の場合、著作者の死亡日が1967(昭和42)年12月31日以前であれば、著作権は「消滅」しています。1968年(昭和43)年になくなった方は、2038年までの70年、著作権が保護されます(1969年になくなった方は2039年まで)。作品題材の著作者が「存命中または、死亡日時が1968(昭和43)年以降」であれば著作権は存続していますので、著作者本人または遺族などの著作権(継承)者の許諾が必要となります。


許諾の取り方

 著作権(継承)者が判明したら、以下の区分に従って手続きを進めます。利用料が生じる場合はすべて自己負担です。


許諾が得られたら、「文芸作品利用報告書」を事務局に提出します。締切りは6月30日。「文芸作品利用報告書」は出品票に同封されています。回答に日数を要することがありますので、時間的に余裕をもって手続きを行ってください。


<利用に当たってのポイント>

  • ▽著作者の没年を確認する。
  • ▽下記、「許諾の取り方(1)~(5)」に従って手続きする。
  • ▽出品票の著作権欄の「(1)存続」にマークする。
  • ▽期日(6月30日)までに「文芸作品利用報告書」を事務局に提出する。

許諾の取り方(1)

楽曲(歌詞)

 日本音楽著作権協会(JASRAC)が管理する日本楽曲の歌詞については、事務局が一括して申請を代行し、審査結果を受けて事務局が使用料を立て替え払いした後、出品者に対して使用料を請求します。


 出品票に同封されている「文芸作品利用報告書」に必要事項を記入し、事務局に提出してください。1曲の使用料は3,300円です。ただし、これは会場展示のみの料金で、図録、役員作品集、DVD、会報に収録された場合には、別途使用料が生じます。なお、落選した場合、使用料はかかりません。


  • ※ただし、外国曲の翻訳は別の管理団体への許諾が必要になる場合があるため、事前に、日本音楽著作権協会のホームページなどで確認する。別の管理団体への申請が必要な場合、「許諾の取り方(3)」と同様の手続きを済ませる。

許諾の取り方(2)

文芸作品その1(「日本文藝家協会」に委託している文芸家)

 「2021日本文藝家協会リスト〔第37回読売書法展用〕」に掲載されている文芸家の著作物利用についても、事務局が代行して一括申請します。落選の場合は使用料が発生しません。役員、入賞・入選した会友・公募の出品者に対し事務局が立て替えた使用料を事後に請求します。使用料は会友・公募=1,100円役員=5,500円です。出品票に同封されている「文芸作品利用報告書」にリストの管理番号を記入します。リストに掲載されている文芸家でも楽曲の歌詞は「許諾の取り方(1)」の扱いになりますので注意してください。また、詩等の抜粋使用の場合、「文芸作品利用報告書」提出時に、必ずオリジナル作品の全文のコピーを添付ください。

日本文藝家協会リスト(PDF/約2MB)

許諾の取り方(3)

文芸作品その2(「日本文藝家協会」「日本音楽著作権協会」に委託していない著作者)

 上記、「2021日本文藝家協会リスト〔第37回読売書法展用〕」に掲載されていない文芸家の場合(「許諾の取り方⑤」の読売書法会推奨文芸家を除く)や、「日本音楽著作権協会」が管理していない楽曲の歌詞の場合、著作権(継承)者に直接連絡を取り、必ず事前に申請し許諾通知を入手してください。許諾が得られたら、「文芸作品利用報告書」に著作権(継承)者の許諾通知を添えて事務局に提出してください。後々のトラブルを避けるために、必ず書面で許諾通知を得てください。時折、「電話で許諾を受けた」という報告がありますが、先方に「許諾した覚えはない」と言われてしまうと証拠は何も残らないので、許諾を得たことにはなりません。


 申請時には「第37回読売書法展」出品作品への題材利用に加えて、「展覧会場での展示および撮影」、「新聞等への掲載」、「図録、役員作品集、DVDなどへの収録」(申請者の資格により条件は異なります)の可能性を明確にしてください。なお、読売書法会全体の名誉にも関わりますので、礼を尽くした対応を心掛けて失礼な態度は厳に慎んでください。また、許諾通知は著作権(継承)者が回答しやすいよう、切手を貼った返信用封筒やはがきを同封するなど工夫してください。


申請に対する著作権者の許諾・拒否の判断は、あくまでも著作権者の自由意思によるものです。無回答も想定されますが、「許諾」の返事がない限り読売書法展への出品は認められません。また、著作物使用料の発生の有無、金額などはいずれも相手の回答次第です。


許諾の取り方(4)

自作

 自作の漢詩、和歌などオリジナルの作品でも、著作権の所在を明らかにするため、「文芸作品利用報告書」は事務局に提出してください。


許諾の取り方(5)

推奨文芸家

読売書法会推奨文芸家リスト

  1. 安東聖空
  2. 石川忠久
  3. 井上 靖
  4. 大橋南郭
  5. 坂村真民
  6. 清水比庵
  7. 西谷卯木
  8. 東山魁夷
  9. 湯浅浩史
  10. 吉澤鐵之
  11. 吉澤鐵石
  12. 吉田一穂

 読売書法展の趣旨に賛同して許諾を与えてくださる方を「読売書法会推奨文芸家」として紹介しています。使用料はかかりません。また、出品者が直接手続きする必要はありませんが、利用報告をするため「文芸作品利用報告書」は事務局に提出してください。


正しい作品利用を

 著作物の利用許諾を得る手続きは、本来とても煩雑です。特にどの団体にも管理委託していない著作権者には、「読売書法展」の説明から始めなくてはならず、理解してもらうには時間が掛かることが予想されます。思うような返事がもらえないからといって、勝手に書いてしまうことは、後に大きなトラブルに繋がることにもなるので絶対に避けていただきたいことの一つです。また、「一部を変えれば、自分のオリジナルとして著作物の利用には当たらないだろう」というのは大きな誤解で、これは「作品の改変」とみなされ、「盗作」、「剽窃」として認識される可能性が非常に高い行為です。


 昨今、著作物の不正利用に関する多額の賠償請求訴訟がしばしば起きています。「書きたい題材が自由に書けない」と不自由を感じる方も多いと思いますが、ルールを守り、正しい作品利用を心掛けてください。


事務局は、連絡先不明者の調査は行いません。必要に応じて、出品者各人で行っていただきます。