榎倉香邨先生

初夏Ⅱ

――作品に込めた思い

釈文：わが戀の終りゆくころとりどりに初なつの花の咲きいでにけり

　牧水は海川山野の大自然、更にそこに集う人々に限りない愛情を、そしてあふるる心情を歌いつづけ四十三年という短い生涯を閉じます。数多くの歌を残しますが激しく燃えさかる恋の歌には特に牧水の真相を感じます。本歌は小枝子との恋に破れ失意の中で「時が来れば花が咲く」と彼の心をなぐさめ、癒やしてくれる花々を歌ったものです。

　苦しみの中にかすかな希望を見いだそうとする牧水に思いを寄せて書きました。

――いま、伝えたいこと

　牧水の歌に惹かれ二十余年書き続けています。なかなか思うようには書けませんが、こうして牧水の真相に触れながら書作ができることの幸せをかみしめています。

　書く歌は何でも良いと思わずに是非この歌人だ、この詩人だと思う人を決め、徹底してその歌を詠み込むことをお奨めします。歌を知ることで書くことへの熱意や表現が変わってくると私は考えています。