百人一首より

百人一首より

――作品に込めた思い

釈文:天つ風雲のかよひ路吹き閉ぢよ乙女の姿しばしとどめむ


 奇をてらうことなく普通に書く、ということに昔から気をつけています。書作品は個性の発露ですから、構成に独自性を持たせて、表現に工夫をし、時にデフォルメすることで、人々により大きな感動を与えることになりますが、わたくしは、何げない表情の作品を志向してきました。この作も、構成に特別なことはせず、題材もいわば普通のものです。

――いま、伝えたいこと

 ペンで書くということですら少なくなっている時代ですが、街中には、立ち止まって見返してみたくなる文字が、まだまだ発見できます。人々がなぜ足を止めるのかは、それぞれでしょうが、これから書を目指す若い方々には、多くの人が作品の前で足を止めてくださるような、なにか魅力を持った表現を残せるようになってもらいたいと思います。


 それには何が必要なのでしょうか。書き手の技術はもちろん必要ですが、おそらく、心の中にある書に対する純粋な気持ち、真摯な想いが大切ではないかと思えています。