読売書法会会長 老川祥一
第34回展にむけて ~書を取り巻く環境の改善~

 昨年、大阪市立美術館で開催した特別展「王羲之から空海へ」は、およそ6万7千人の入場者を数えました。時代を超えて評価される古典や魅力ある書は数多くの人を引きつけるという良い例でありました。その古典に立脚して「本格の輝き」をもつ書を求めていく読売書法展ですから、審査会で選ばれる作品の技術的な高さを疑う余地はありません。


 ただ、技術的な高さや精緻な芸術性は一般の鑑賞者にとって難解なものになりがちです。書の素晴らしさを楽しめるように、作者が会場で自作を前に語るなど様々な工夫をしていくことで展覧会が実作者の発掘・奨励だけでなく、鑑賞者の育成にもつながることを期待します。


 今、書を取り巻く環境を改善しようという動きが進んでいます。


 この度発表された小・中学校の学習指導要領改定案は、伝統や文化に関する教育の充実をうたっています。小・中学校での書写や言語文化の教育が、これまで連携が薄かった高校の国語と芸術科書道につながるような工夫を求めています。ここで書写や国語の授業に古典作品を積極的に活用する取り組みが進めば、書に関心を抱く生徒も増えていくことでしょう。


 また、「日本の書道文化-書初めを特筆して-」をユネスコ無形文化遺産に登録しようという活動には昨年末までに、44道府県(知事)から賛同署名が寄せられています。


 読売新聞社は2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会のオフィシャルパートナーとなりました。これに合わせて、同大会組織委員会が認める「東京2020参画プログラム」に読売書法展を登録いたしました。第34回読売書法展では各会場が書道人口の拡大につながる様々なアイデアを試行し、発信する場となるようご協力をお願いします。


2017年3月

読売書法会会長 老川祥一

読売書法会会長
老川祥一